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内藤邦雄の「mid NAITO cafe ~ミッド ナイト カフェ~」

仙台水沢紀行(3)

地方競馬には、そこはかとない郷愁がある。
故郷を持たないボクは、それを郷愁と感じたが、もしかすると哀愁といったほうが正しいのかもしれない。

ボクはこれまで、南関東の大井、川崎、浦和、船橋のほか、宇都宮、高崎、笠松、益田といった地方競馬に行った。
残念ながら、南関東と笠松以外は、すでに閉鎖となってしまっているが、その思い出は残る。
ボクが20代の頃は、やっと大井でナイターが始まったばかりで、大井以外は、みな同じ匂いがした。
他人同志、それぞれが勝手に競馬をしている雰囲気は、すべてが平等であり、すべてが孤独でもあった。
その中に埋没することで、ボクは非日常と心地よい安心感を感じられたのだった。
たとえそこが、競馬場という戦場であったとしても。。。

ボクは次の朝、仙台から1時間新幹線に乗って、水沢競馬場を訪れていた。
「水沢は仙台からも遠いんだよ」とは、前夜に引き続き同行のあっちゃん(いとこ、小学校教師)。
ふたりは、軽い二日酔いの頭を抱えながらも、水沢競馬場に心躍らせていた。

静かな田園地帯のその先に古いが大きな建物が見えてきた。
向かう人の列からは、野武士のごとき殺気がただよう。
古き良き地方競馬がそこにあった。
仙台水沢紀行(3)_a0076693_12593229.jpg

近づくと、入口の近くにパドックとすぐ横に馬券売り場。人々は、そこに集結していた。
馬券売り場は、パドック横の区画のみ。1階のほとんど、2階、3階のすべての馬券売り場は閉鎖中。
そして奥には JRA の新しいビル。そのコントラストは、現代の競馬界を象徴するよう。
昔は少なくとも、いまの5倍以上の来場者がいたのだろう。
水沢競馬の馬券売り場からは、往年の盛況ぶりがうかがえる。

悲しくも、気高きこの競馬場に来るためのボクは旅にでたのだ。

最終回へつづく





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by cultemo | 2014-09-25 13:00 | 食・酒・店

翻訳とローカリゼーションの株式会社カルテモの 社長 内藤邦雄 が日々考えたことを語ります

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