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内藤邦雄の「mid NAITO cafe ~ミッド ナイト カフェ~」

鹿児島工業 今吉晃一君 にみた全員野球

早稲田実業と駒大苫小牧との再試合におよぶ激戦の末、早稲田実業の初優勝で幕を閉じた今年の甲子園。
斎藤君と田中君のすさまじき投げ合いは、応援という枠を超え、見るものに震えるような感動を与えてくれた。両投手、両選手、そして両応援団に皆さんに心から敬意を表したい。

さて、今年の甲子園。近年まれに見る盛り上がりだった。
熱戦につぐ熱戦。逆転につぐ逆転。
原因は多々あると思うが、ひとつに野球の地域差、学校差がなくなり、選手ひとりひとりがあきらめない強い精神力を持っていたためだろう。
それは高校野球の大きな進化かもしれない。

今年の甲子園では非常に珍しいことがあった、
この前の土曜日。早実vs.鹿児島工業の試合で、代打「今吉晃一君」が告げられると、球状全体から大きな拍手。そして1球、1球スイングのたびに大きなどよめき。結果は三振。でもやはり球場からは大きな拍手。
そしてそれだけではなかった。
鹿児島工業ピンチの際、伝令「今吉晃一君」がマウンドに駆け寄る。
やはり球場から大きな拍手。NHKのアナウンサーは言う「過去に伝令の選手にこれほどの拍手がおくられたことがあったでしょうか」

今吉晃一君。
鹿児島工業副キャプテン。背番号11。代打の切り札として甲子園でも高打率をマークした彼は、誰よりも大きな声、誰よりも明るい笑顔でチームを盛り上げる。
早実に敗れた後、監督は言った。「うちのチームは鮫島(主将)が父、今吉(副主将)が母」。

私は、今吉晃一君のプレースタイルに大きな意味を感じる。
よく「全員野球」という言葉が使われるが、その定義は非常に多様で難しい。
野球は9人でプレーするスポーツだ。しかし、チームは9人以上いることが多い。当然出れない選手がいる。「全員野球」という意味の一つとして「全員試合に出す」という考え方がある。これももちろんいいことだと思う。
では、試合に出なかった選手は、野球をしていないのか?
いやそうではない。

個人的な考えを言わせていただくと、「野球をしたか、しなかったか」は本人しだいだと思う。
今吉晃一君は、代打で出場しているが、彼は代打以外でもプレーに参加しているのだと思う。
チーム全員の目的のために、自分ができることを精一杯することは、たとえ、グランドに出ていなくても、チームとして戦っていることだと思う。
鹿児島工業は初出場ではあるが、激戦区鹿児島を制したということは、当然強豪校であろう。
今吉晃一君も幼い頃から野球をしてきて、甲子園を夢見ていたことは想像がつく。
そして当然のことながら、彼もグランドでプレーしたいはずだ。でも彼は、自分にできることで、精一杯、チームに貢献する方法を考えたのだと思う。

「全員野球」とは「チーム共通の目的のために自分ができることをする」ことだと私は思っている。それは選手としてプレーすることかもしれないし、コーチャーズボックスにたつことかもしれない。また、ブルペンで控え投手の球を受けることも、スタンドで応援することも、もちろん全員で野球をするためにはきわめて大切なことである。

熱戦の続いた甲子園。
そしてさわやかな風をのこしてくれた今吉晃一君。
かれのプレースタイルこそが全員野球の実践なのかもしれない。

あらためて勉強させられた夏だった。

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by cultemo | 2006-08-23 12:50

翻訳とローカリゼーションの株式会社カルテモの 社長 内藤邦雄 が日々考えたことを語ります